「ブックオブエイリアン(the book of alien)」という本があり、
映画「エイリアン」のさまざまなデザイン画、創作の裏話が掲載されている。
メビウスによる宇宙服のデザイン画があり、一目で観て分かる素晴らしさですが、
最も目を引くのは、H・R・ギーガーによる、エイリアンのデザイン画である。
同書によると、
ギーガーは「バイオメカニクス」というコンセプトを立てて、エイリアンのデザインに取り組んでいる。
バイオメカニクスでは、機械が有機的に見え、有機的なものに機械的な質感がある。
何よりも、「骨をいじるのが好きだ」とギーガーは言う。
エイリアン(成体)の頭部・顔面は、何とも言えない不思議で不気味な、魅力的な形態をしているが、
ギーガーは、彼の独創的なバイオメカニクス論を、エイリアンの舌に応用した。
頭部が横長になれば、恐ろしく実用的に、引込式の舌を備えられないかと考えたのだという。
ーーギーガーはじめ、SFXの職人たちによる「エイリアン」の創造過程は、
「ゴジラ」や「ウルトラマン」 日本特撮草創期のモノづくりと重なるところを感じ、とても興味深い。
そしてまた、ギーガーのデザインーー有機的なようで機械的でもある、不思議な魅力とカッコ良さーーに通じる魅力を備えているのが、
ジョジョのスタンドデザインである。
ジョジョベラーのスタンド解説本を読んでいると、
スタンドデザインのコンセプトとして、「生物のような機械のようなデザイン」という表現がたびたび現れる。
荒木先生は「エイリアン」をSFホラーの教科書として絶賛していたし、
椛島編集からギーガーのデザイン画集を薦められたこともあったとかで、
ギーガーが提唱する「バイオメカニクス」を、アラキ流に噛み砕き、自己流のデザインとして百花繚乱に展開したのが、ジョジョのスタンドたちなのだろう。
個人的に、ジョジョ3部~8部(ダモカンの話まで)のスタンドを一堂に並べて、
「最もカッコいいデザインのスタンドは?」と言われれば、
キラークイーンとザ・ワールドが浮かんだ。
プッチ神父のメイドインヘブンもカッコいいが、単行本発売時に改名してしまったのが今イチで、
元の名前のステアウェイトゥヘブンのほうが、名前がデザインを引き立てて、よりカッコ良かったと思う。
クレイジーダイヤモンドやスタープラチナは、正直、デザインだけを見るとあまりカッコ良くなく、もっさりしてる感じがある。
主人公(本体、スタンド使い)のパーソナリティーの魅力と、能力の使い方の面白さで、とても魅力的なスタンドになっているが、
スタンド単体を観察すると、キン肉マンと北斗の拳のあいだのような、人間の闘士っぽいデザインなのが、「スタンドらしさ」を低くしているのかもしれない。
ギーガーのデザイン画は独特のクセがあって、気持ち悪い感じの絵も多いのだが、
ギリギリの線で踏みとどまっているというか、気持ち悪さと美しさの両方を取り入れて、全体として一つの整合性ある世界を作り上げているのが素晴らしい。
人間、気持ち悪いだけの方向に傾いて走ったり、建前だけのキレイごとを述べて取り繕ったりすることは簡単だけど、
聖と俗 両方を併せ持った器量の大きさ、清濁併せ飲んで最後に「おいしい飲み物」を作りだすことはとても難しい。
ギーガーのクリーチャーデザイン、ジョジョの物語とキャラクターなどは、
清濁併せ飲んだ、飲み明かした夜明けの明るさを備えているようで、稀有な作品であると思う。