ジョジョ読者のブログ

ジョジョの奇妙な冒険の感想、批評、考察を書いています。

空想特撮シリーズと、クラフトワーク

ジョジョ5部に登場するカプリ島を、10年ほど前に訪れたことがある。
風光明媚で夢のような青空が広がっていたが、
(最近 カフェで立ち読みした本によると)カプリ島は同性愛の聖地でもあったらしく、
皇帝やお金持ちが愛人を囲みたくなるのも頷けるような、光と影の濃いリゾート地であった。

カプリ島に現れるスタンド使いはサーレー、クラフトワークというスタンドの持ち主である。

この記事は、サーレーの元ネタ、クラフトワーク円谷プロの特撮作品についての覚書です。


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クラフトワークは、ドイツ人のラルフ・ヒュッターとフローリアン・シュナイダーの2人が作ったテクノユニット。
母国語のドイツ語では「クラフトヴェルク=発電所」と読む。

サーレーのスタンドは任意の物体を好きな場所に固定させる能力で、どこからクラフトワークのイメージが繋がったのか? ちょっと不思議な感じがある。
クラフトワークの造る音色はとても固く、岩を削りだしたような趣があるので、
そんな堅固なイメージから、スタンド名をクラフトワークと名付けたのかもしれない。

クラフトワークの傑作は1970~80年代に集中していて、
Autobahn, Trans-Europe Express, The Man Machine, Computer Worldの4枚がとりわけ素晴らしい。

上記アルバムの音色は、いわゆるレトロフューチャーというものに該当するのでしょうか、
過去と現在と未来が同時に存在しているような、そんな不思議さと懐かしさが詰まっている。

キラキラ輝くオモチャに触れているような喜び、
手作りの工夫と素朴さ、最先端の技術で古典からの原野を切り開く面白さ。

アルバムコンセプトとしてはTras-Europe Expressが最も優れていて、
このアルバムを聴きながら、いつかヨーロッパを鉄道で横断したいものだ と呑気な夢を描いている。


クラフトワークの過去と未来を繋ぐ感じ、手作りの遊びを芸術に昇華させたこの感じは、
円谷プロの特撮シリーズ、空想特撮シリーズの、あの感じによく似ている。

空想特撮シリーズとは、1960年代に放送されたテレビドラマ、
ウルトラQウルトラマンウルトラセブンのことです。

私(ブログ管理人)は1976年生まれであり、残念ながらこれらをリアルタイムで観たことはありませんが、
20世紀後半の時代を切り取ったドラマであることに疑い無く、
過去に在りながら未来を描き、かつ現代(人間と社会)の普遍相を描く、文芸面の魅力がこのシリーズの胆である。


クラフトワークも空想特撮シリーズも、
大人が子どもの気持ちに戻って作った、純粋な創作の喜びが作品に溢れていて、
だからこそ、40年経っても50年経っても、多くの人の心を打つのだと思う。

ジョジョの作者 荒木先生は1960年生まれであり、
幼稚園~小学校低学年くらいの年代で、ガメラゴジラウルトラマンなどを見てきたと思われる世代である。

ジョジョに登場するスタンド使いたち、スタンド能力の「異形のキャラクターが毎回登場し、手を替え品を替え現れる楽しみ」は、
ウルトラマンで、新たな怪獣が毎週現れ騒動を巻き起こす、あの感じを基底にしているのではないかとも思う。

空想特撮シリーズに始まるウルトラマンシリーズの一連の作品で、最も強い怪獣は誰か?
ジョジョスタンド使いで一番強いのは誰か?と同じく、キャラクターを戦わせて楽しむ遊びは、古今東西 変わらずあるものなのだろう。

ゼットンバードンはどちらが強いのか、エンペラ星人とテンペラ星人、レイブラッド星人の相関性はどのようなものがあるか。
DIOと吉良、ディアボロ、プッチ。ヴァレンタインも含めて、時空間を操作するスタンドの最強能力は何なのか……
他愛もない空想であるが、考えているうちに穏やかに眠れそうで、不眠のときの安眠剤にも、空想遊びは良いものかもしれない。