ジョジョ読者のブログ

ジョジョの奇妙な冒険の感想、批評、考察を書いています。

「何が起こっているのか分からない」 ジョジョに特徴的な場面描写

ウルトラジャンプ 2019年7月発売の最新号を読んだ。
常敏・つるぎとオージロー、マコリンの戦いが描かれた話で、スピーディーに決着して面白かった。

常敏のスタンドがどのような罠をしかけたのか、オージローはどうしてプールに飛び込み、マコリンは誰の携帯電話を取ったのか?
一読したときはよく分からず、何が起こっているのか分からなかった。

時間を置いて読み直して、常敏が自室でサイフ、携帯電話に罠を仕掛けていたこと。
オージローとその仲間を追跡するためにオージローを逃がし、即死させず、アジトと仲間にたどり着いたところで2人を倒したことが理解できた。

次号以降 オージローが撮影した動画が保護者連に拡散され、さらなる厄災が襲ってくるのか? ちょっと予想が付かない。
東方フルーツパーラー、吉良家の家族たち、岩人間の野望を含むところで、次号以降の展開が進むのだろう。


ジャンプと同日に発売されたコミックス21巻を読むと、毎月の連載を読むよりも通じが良く、
コミックス1巻単位くらいで、話がすこしずつ進み、キャラクターの動静が描かれ、積み重なりつつあることがよく分かる。

モカンと吉良ジョセフミの過去編からジャンプを毎月 読みはじめたが、
ジョジョリオンの話は、コミックス数冊を通して読んだほうが、エピソードの通りが良く、話の力点がよく分かって読みやすいかもしれない。
雑誌の紙質は汚く、コミックスのほうがきれいな紙で見やすいので、そちらのほうが読みやすい ということもある。


何が起こっているか分からない場面描写というのは、ジョジョに特徴的で、
トリックや駆け引きを散りばめる戦闘描写、
キャラクターやストーリーをあまり説明しすぎず、テーマや作者のお説教を表に出し過ぎず、
スリルとサスペンス、ホラーやグロテスクを前面に出しつつ、物語を紡ぐ荒木先生の創作技法によるものだと思う。


21巻で描かれた、常敏親子と小学校同窓生・教師たちとのやりとりはかなり面白く、
教職員として勤務経験のある自分には、ウンウンと頷きながら面白く読めた。

荒木先生が言うところ「キレイでないほうの現実」、醜さや酷さというものが世の中には確かにある。

そして、それらを説教臭くないかたちで表現する、
ただのグロやホラー、エロ描写で終わらせるのでなく、それらに対置、対抗する価値観を出して戦わせつつも、全体としてはエンターテインメントであるというのが、
ジョジョの、荒木飛呂彦作品のオシャレなところだと思う。

誤解を招く表現かもしれないが、ひらたく言って、「バカでも分かるように」説明はしない。
噛んで含めるように何でもかんでも説明しないので、初めて読んだときには分かりにくい。
それが流儀なのだろう。


ジョジョをめぐる感想を読んでいると、スタンド能力のあれこれの予想や分析、バトルの展開の良しあしを楽しみ批評する声が多い。
バトルや超能力の面白さが展開の機軸を成しているのは確かなのだけど、
私個人としては、ストーリー、キャラクターの流れ、展開のうねり、絵、コマ割りで表現される場面展開の表現力、そういったものを楽しみに読んでいる。

院長先生のスタンド能力は、たぶん、因果律、運命を操作する能力で、これまで杜王町に起こった不可思議な事象、つじつまの合わない展開とかも、
すべて、院長先生の能力で、主人公達はワナにかかっていたのだ…… みたいな展開が、ありそうな気もする。
ふた昔前の特撮、マンガでよく有ったかんじのアイデアで、終盤にちゃぶ台がえしをするだけでは面白くないので、もう二ひねりくらい有る気がする。

定助のシャボン玉が超ひも理論にあること、
常敏が熱をコントロールすること(エシディシ、バオーのウォーケンを連想させ、何か自然物理の根本からエッセンスを取った能力が出てきそう)、
医院長 明負悟の、運命や因果律を操作する能力。

トオル君・康穂との三角関係、常敏・つるぎを中心とした東方家の問題、ノリスケと花都の関係。
ホリーさんと岩人間の因縁から、ロカカカの実は果たして誰のためのものなのか というところで、
スタンドバトル、キャラクターたちの因縁を含めて、これからまとめていくネタは沢山ありそうだ。

東方家、吉良家、岩人間、さらには杜王町の住民たちが加わることで、
わりと生々しい感じの、理想的では無いイヤなところもある現実の人間たちが相まみえる展開は、なかなか面白い。

写真を合成して描く背景描写が、絵の全体的な質感、パースが微妙に揃っていなかったりするところもあるのだけど、
「リアルな現代日本の風景」を描きたい という、荒木先生の創作意欲から来るものなのだろう。

ここから先、未知の強敵みたいなものはもう出てこなくて、ストーリー、キャラクターの行く末をまとめにかかっているところだと思う。

台所のシンクで言うと、洗い物の水がゴゴゴゴゴッと音を立てて、渦巻きになって流れ出しているところで、
排水完了した後、シンクの排水口にいったい何が残っているのか?
美しい何ものかが顕れているのか、ゴミのような無残な現実が残っているのか 次号をお楽しみに、といった按配であった。