ジョジョ読者のブログ

ジョジョの奇妙な冒険の感想、批評、考察を書いています。

「無敵のヒーロー」から遠く離れて

このブログ記事で、本ブログの記事は200本目の投稿になる。
数字にとくに意味は無いが、数字の節目が積み上がってくるのは何となく嬉しい。

本ブログでは、ジョジョ7~8部のことを主に書いているが、これは現在進行中の部であるからで、
個人的には、ジョジョシリーズのベストは1~3部、なかんずく3部で、中学生のときに熱中して読んでいた。

ひらがなの書き方や、「おはようございます」「ごめんなさい」のあいさつをメモ帳に書き留めずとも暗唱できるように、
小中学生までに読んだマンガは、自分の中に刷り込まれてしまった「概念」なので、言語化して整理する必要は無い。

ジョジョリオンは現在進行中のストーリーであり、ジョジョシリーズの全体像は、触れ直すたびに新たな発見・気づきがあったりもして、
それらをブログに書き留めているーーという次第である。


ジョジョリオンの連載は、定助が礼さんにしばしの別れを告げて雨弾に撃たれ、病院に担ぎ込まれたところまで進んだ。

定助が自らのアイデンティティーの不確かさ、記憶が無く、生家(肉親との絆、つながり)を喪失しており、だからこそ前に進みたい と訴えるくだり。
過去編のジョセフミから繋がるキャラクター設定なのだが、捉えようによっては、とても重たく辛い来歴である と感じた。

荒木先生によると、ジョジョシリーズ キャラクターたちの戦いは1対1で、善と悪を問わず、孤独な者たち同士の戦い、ひとりぼっちになった者がお互いにどう機転を働かせ生き残るか みたいなことを描いてきたそうである。

3部 ヴァニラアイスとの戦い「答えは3」のやりとり、ポルナレフがイギーやアヴドゥルのおかげで勝てたのか、自身の力で勝てたのか みたいなところである。

3部の承太郎は「無敵のヒーロー」で、3部作を完結させる主人公としてとにかく強く、産まれ育ちにもスタンド能力にも弱点は無かった。
(4部~6部にいたって、物語のテイストが変わっていくと共に、承太郎の役割も変わっていったが、3部の時点では完全無欠のヒーローだった)


近作 7部、8部ではずいぶんテイストが変わって、主人公たちはまったく無敵ではない。

ジャイロは謎の風来坊として登場するが、ジョニィに秘密を打ち明けた後、大統領に勝てず死んだ。

ジョニィもマイナスから始まった主人公として登場し、下半身不随の障害は克服されたが、成長しつつ成長しきれないという若さを残したまま、杜王町で子どものために死んだ。

初代主人公のジョナサンからして、ディオを倒してハッピーエンドというわけにはいかず、ジョセフも死んだと思わせてちゃっかり生き残るなど、
当シリーズの主人公は、スーパー戦隊みたいな勧善懲悪、悪を倒して正義の栄がやってきた、という終わり方をしない作風でもある。

現在連載中のジョジョリオンでは、定助は記憶喪失(震災前の記憶はたぶん回復しない)、ジョセフミとして産まれたときから孤独に、親の愛を得られずに育ってきた。
定助が空条家のルーツを探索しないのは、物語進行上のアラでは無く、設定を覚えているからこそで、
「そこに行っても、自分の求めるものは得られないので」、探しに行かないのだと思われる。

先日 8部11巻~21巻を読み返したのだが、過去編のところは面白く、ジョセフミと吉良のエピソードは心動かされるものがある。
(続くドロミテのゾンビエピソードは作者の趣味に走っていてイマイチだが、最後 赤ちゃんが定助を追い詰めるくだりは良いと思った)


ジョジョリオン 終盤にいたって、定助と常敏、2人の男がどう立ちまわるのか、
表の主人公が定助、裏の主人公が常敏というかたちで、ロカカカの実をめぐって院長との駆け引きを繰り広げながら、ラストまで突っ走っていくのではないか と思う。

ストーリーの表面的な進行としては、トオル君は院長とグルなのか悪役なのか?と思わせて、純粋な恋敵でした という肩透かしをさせるのでは と予想している。
院長とホリーさんの因縁、そこから吉良家と東方家の因縁に話が移って、最後 東方一家と定助の対決(=スタンドバトルに加えて、議論、哲学のぶつかりあい)で決着が付くのではないだろうか。

個人的には、家長 憲助さんにもう1枚2枚、裏があるような気がして、
(ロカカカの実が現れた以降)21巻までの描かれ方だと、どうも物わかりが良すぎるというか、主人公にとって都合のよすぎる人に思えてならない。
東方家の利益のために憲助さんは動いている筈で、ならば、最後の最後 定助とホリーさんに実を渡すのか、あるいはつるぎたち東方家のために実を使うのか そこのところの葛藤は、描かれるのではないか と予想している。

常敏も大家族の次期家長として産まれ、呪いの持病に苦しみ、イジメを受けて、そこから「毎日が夏休み」のライフスタイルに到った経緯がある。

定助も常敏も、どちらも全く、完全無欠のヒーローでは無い。

ジョジョリオンのラスボス(的な概念)はあえて言うならば「生と死」、現代日本社会をどう生き延びるかみたいな概念で、
物語の都合上 明負悟という強キャラは出てきているが、3部~5部みたいなスタンドバトルの盛り上がり、オラオララッシュの撃ちあいみたいな展開は無いだろうと思われる。
そもそものところ院長は89才で、ヨボヨボのじいさんがラッシュを撃って戦ったり、マッチョに空を飛んで戦うのは、絵的におかしいし、ちょっと無いんじゃないか と思う。

初期設定を背負って登場してきた主人公たちがどう生き延びるのか。
あるいは、常敏、花都、憲助の誰かは死んでしまいそうな気がするが、最後に死ぬとして、キャラクターがどういう生き様を見せて死ぬのか。

そこらあたりで、近作 8部のクライマックス、ザ・ワンダー・オブ・ユー(君の奇跡の愛)に到るまでの展開が描かれる気がする。
連載期間にしてあと1~2年くらいではないかと思うが、ロカカカの実 収穫まであと48時間、だいたいのところで物語は収斂に向かい始めている と思う。