ジョジョ読者のブログ

ジョジョの奇妙な冒険の感想、批評、考察を書いています。

ジョジョリオン 定助がホリーさんに助けられた話に、ガックリ来た感想

身の回りがバタバタして、慌ただしい日常を過ごしている。
去年は父が、今年は母が相次いで病院に入院し、幸い 二人とも無事で退院できる見込みなのだが、お迎えが迫りつつあることを感じる。

XTC Wake upという曲を聴きたいテンションになり、クルマの中でかけていたが、
ミックスがしつこく聴きづらいこの曲を聴きながら、テンションを高め、気持ちをまとめていた。

ウルトラジャンプ2019年12月号 定助がホリーさんに助けられる話で、たまたまの偶然だが、病院に集まる母と子の話しだった。
私の家族はマンガほどドラマチックな状況下には無いのだが、
母が子を想う気持ち、子どもが母を助けようとする意思を持つことは、誰にも頷ける普遍的な情緒であり、私も納得した。

インターネットでのジョジョリオンの感想を散見していると、
今回の話は良かった、主人公が母を助ける決意を得られたこと、ついにアイデンティティーを獲得できたことに感動した と、(通常比で)良かったという感想、肯定的な評価をする方が多いようだった。

マンガの感想を述べることは自由であり、良かったよ という方の感想・意見を尊重すべきことは当然なのですが、
私自身の感想としては、今回の話は、正直なところ、ここ最近で抜きん出て良く無かった。

今回の話 (ウルトラジャンプ連載時)「危険な追跡」と題された4か月分の連載は、
定助がアイデンティティーを獲得するという着地点がまずあって、そこに到らせるまでに、主人公やキャラクターたちをどう動かすか、というところが物語上の肝だったと思う。

雨の中 パトカーが集まり、定助が自分の孤独を告白し、雨粒の中に飛び込んでいく件がある。
その後に、病室に担ぎ込まれてホリーさんに助けられる流れになっているので、今月号の話の流れは、ある程度 事前に組み立てられていたのかもしれない。

ホリーさんが昏倒してベッドに縛られていた描写が以前にあって、そこから急に意識を戻して、理路整然と、母の慈愛を発揮して主人公を助けるというのは、
意外な展開のサプライズというよりは、ちょっとムチャクチャなのではないか というのが、最初の印象だった。
ホワイトスネイクが幻想を見せてきたときのような、微妙に辻褄の合わない描写で、これはどうやって収拾をつけるんだろう…? と、半歩引きながら読み進めていくと、
「これは果たして幻覚なのか、本当なのか!?」と主人公のメタ的なセリフが入りつつも、そのまま、最後まで終わってしまって、エッ!?となってしまったのが本当のところだった。

ジョジョシリーズを読み続けてきて、ページをめくりつつ気持ちが離れていく、というのはあまり無い経験で、
(熱心に読みはじめた3部以降でいうと)カメオ戦の後 アヴドゥルが生きていたことを、ポルナレフが知らされず隠されていたと発覚したくだり。
ジョルノが刑務所を訪問すると、ポルポが自分の指を食い始めたあたり、アナスイがカエルの脳にスタンドをつないでヨーヨーマッを倒したくだりなどである。

要するに、作中の展開についていけなくなって、気持ちがページから離れてしまう。しらけてしまう、という瞬間である。

今月号の話にて、やや強引には感じるが、ホリーさんと岩人間の因縁、主人公がホリーさんを助けることの意思の強調、アイデンティティーの確認。
そして、岩人間の院長の野望のありさまがピークに達するところを描いているのだと思う。

ダラダラとしたグチになってしまうが、明負院長が講演をするくだりも、司会のアクションやセリフがややわざとらしいというところから始まり、
そもそも、秘密下で研究しているロカカカの技術を、このようなかたちで講演・公開するだろうかという疑問や、
医療技術の肝であるところの等価交換が「謎」のままで、厚労省が認可をしたり、医療業界や患者さんたちが納得し受け入れるだろうか?
マンガで描かれた院長の講演を聞くかぎりでは、あやしい健康食品の通販番組と、同じくらいの説得力しか感じられなかった。

定助とホリーさんの絆を描きたい意図は分かるし、院長を中心とした再生医療の陰謀を描きたい意図は分かるのだが、
これまでに積み上げた描写との整合性、現実的なリアリティに基づく説得力が欠けている と感じられ、自分には、今回の話は、エンターテイメントとして受け入れられず、心に響かなかった。

アナスイがどうやってヨーヨーマッを倒したとか、アヴドゥルが生きてたことをポルナレフに隠す動機がそこまであったのかなど、
よく分からないくだりは時々あるものだったが、お話全体の基盤を揺るがすものではなく、アヴドゥルの父にアヴドゥルが変装していたとするなど、いかにも週刊連載らしい、その場の思い付きで話を変えたんだろうなという感じで苦笑したものだった。
今回の話は、8部の中心となるエピソード、話の重要な折り返し点になるものだろうと思うので、あまり面白くなかったのは残念だったが、仕方が無い。


メタ的な観点で見ると、主人公の左上半身にロカカカの影響で、岩が食い込んで、ジョースターの星のアザを含めて、7つの形が浮かび上がってるのが、
北斗の拳の北斗七星を意識しているのだろうか?と思って、ちょっと面白かった。

正直に言うと、ジョジョリオンの連載は、1巻~10巻くらいまでは冷ややかに、あまり面白くない…と思って、距離をおきつつ見ていて、
モカンが登場したくらいから面白さを感じ、これからの盛り上がりを期待して読んできたのだが、
オージローがせっかく再登場しつつも、あまり登場の意図がよく分からないまま倒されてしまい、
危険な追跡のエピソードが、院長のスタンド能力が何でもありで恣意的な解釈・逆転技(どこまでが追跡の意思を持つとし、どこからが追いかけさせるのか など、判断・判定の基準が主観的で、作者のサジ加減が見えてしまいやすい)になっていきそうで、
うーん、期待しつつ毎月の展開を読んできたけども、ジョジョリオンのこれからの畳み方には、あまり期待できないかな… と、半分 諦めを抱いたのが、今月号の話だった。

(このブログを見に来る方は、ジョジョリオンジョジョシリーズに関心がある、ファンだと言う方が主だと思います。)
あまりポジティブな感想ではないところが申し訳ないですが、正直なところ、ぶっちゃけたところの感想が以上のところだった。

あと1年くらいで、だいたい完結までの道筋が見えてくるのでは? と思いますが、愚かな読者の一人である私の期待を裏切って、面白くまとめてくれたら嬉しい。

でも、たとえ荒木先生がこのブログを読んでいたり、荒木先生が私と対面する機会を持てたり、(ありえないことですが)荒木先生が私の父母であって両親をディスることは親不孝だとしても、
良くないものは良くないし、面白くなかったのだからしかたがない。

ジョジョリオンにはもう1本の柱、東方家を中心に、家族のありかたをめぐる物語が残されている。
定助(=吉良家とジョセフミ)をめぐる家族のありかたと、東方家のありかたを対比しつつ、物語のクライマックスが描かれると思われる。

多分、なんとなくホリーさん、岩人間、吉良家をめぐるエピソードや設定はこれ以上 あまり盛り込まれないような気がするので、
残るところ、東方家のお家騒動、家族の幸せのありかた、というところに描写が割かれていく気がする。
こちらに期待して読んでいこうと思う。