ジョジョ読者のブログ

ジョジョの奇妙な冒険の感想、批評、考察を書いています。

ストーンオーシャンを巡る連想、あれこれ

ストーンオーシャンを巡る連想、あれこれの雑記です。


・ジョリーンがプッチ神父と戦って死ぬ時、蝶が群れをなして飛び立っていく。
これは、ジョリーンたち主人公の魂の暗示であり、「胡蝶の夢」を連想させる幻想的な演出でもある。

新世界に蟻一匹がたどり着いたように、蝶の魂も、エンポリオの居る新世界にたどり着いたに違いない。
だから、(蜂のマークの偽物とは違った)可愛い姿のアイリンが、最後にエンポリオと巡り合うことができた。

・7部からの新世界は、6部ラスト エンポリオがたどり着いたアメリカ大陸のある地球である。
エンポリオが刑務所前バス停にたどり着いたのが2011年であるなら、同じ頃 杜王町では定助たちの冒険が始まっていることになる。

・6部のラストで、ジョースターとディオの因縁は解消し、6部の主人公たちは死んでしまった。
しかし、これはジョジョの物語を決着し、さらに描き続けるための措置であり、(創作上の)前向きな決断である。
1部から6部までの物語が無かったことになったのでもなければ、主人公たちの戦いがムダに消滅したわけでもない。

・フーファイターズは満足して成仏したので、新世界に転生していることはない。


ストーンオーシャンというタイトルは、石造りの刑務所、そして母性愛に溢れた女性の心を意味している。
どことなく「豊饒の海」を連想させるタイトルであるが、おそらく関係ないと思う。

プッチ神父のメイドインヘブン(個人的にはステアウェイトゥヘブンと呼びたい)は、ニーチェの超人思想に影響を受けている。
永劫回帰の思想を体現したかのごとき超人=プッチ神父が、一人の子供に破れて戦いが終わる。

プッチ神父には、ニーチェだけでなく、キリスト教の教義・荒木先生の宗教観が投影されているものと思われるが、
私自身がキリスト教に詳しくないため、分析して語ることができない。
キリスト教の神父で、ジョジョの愛読者であるような方が読めば、さらに興味深い考察・批評が行えるのではないかと思う。


・荒木先生によれば、6部は、3部までの単純な続編(人気者の承太郎を再登場させて、人気を繋ぐ)という作品ではなく、
父と子の物語を描きたいという原点があり、これに則り、承太郎を登場させるに至ったのだという。

(6部をめぐる各種インタビューおよび、「映画の掟」p160 シュレックを語るページより。

シュレックで、未完成で荒削りだった主人公が落ち着いたお父さんになってしまうことに不満がある、漫画を読んでても同じ疑問を感じる、と述べた後で)「そうそう、承太郎がジョリーンの父親になるのは、話が全く別物になっているということで、除外させてください」)


「6部は、承太郎が弱くなり、ジョリーンも承太郎も死んでしまうので嫌いだ」という3部ファンの声があるが、
それを言うなら、4部でジョセフが耄碌して登場したり、5部でポルナレフが半身不随になってしまうのも気の毒のような気がする。

ジョジョの物語は、一つの部が完結するごとにピシッと完結している感があって、
6部→7部だけの断絶ではなく、全てのパートごとが独立し、それぞれ完結している趣がある。

上記の、承太郎やポルナレフというキャラクターに感情移入したくなるのはよく分かるが、
行き過ぎると、「ミザリー」のアニーのように、自分の思うがままにキャラクターを束縛したいと、作家を監禁するような事態に陥らないだろうか。

キャラクターではなく作品を読む、作家と作品⇔読者の適切な距離感を知る、ということは大切だと思う。


(ーーすこし趣向を変えてーー)
ヒッチコック監督の「マーニー」を観た。
評論家によれば、サイコ→鳥→マーニーと続く絶頂期の3部作で、観てみれば成程、サイコに始まったモチーフ・テーマが連作するように3部作は描かれている。

マーニーは、一般的にあまり評価は高くなく、(白い恐怖など)前作とのネタ被りが指摘されている。
個人的には、マーニーは、サイコのノーマンベイツの救済を描いた後日譚のようでもあり、母と娘の絆が確かめられるストーリーに感動した。
ただし、ホラー・サスペンスの盛り上がりを期待した観客には物足らない点があり、
マーニーという主人公に感情移入できるか次第で、映画の評価が割れてしまうのだろう。
キャリーの母娘のアナザーストーリーであるような、マーニー母娘の人生ドラマは、個人的には面白かった。


ヒッチコック監督のマーニーがイマイチな評価を受けているのと、ジョジョの中でストーンオーシャンがイマイチな評価を受けているのは似ている。

・一言で言って、マーニーやストーンオーシャンは、マンネリに陥ってる嫌いがある。
リアルタイムで作品を長く観つづけてきたファンであれば、そんな感想を持ってもしょうがないと思う。

・これまでのキャリアを総括して、全てをまとめあげるような大作を作ることは、難しいのだろうとつくづく思う。
マーニー、ストーンオーシャン豊饒の海、いずれも単純明快なハッピーエンドの物語ではないが、
これまでの作者の創作の歩みと照し合せて、しみじみと人生を味わうような、石庭を鑑賞するような味わいがある。

・言うは易く、行うは難し。
作家の作品を鑑賞し、あれこれ感想を述べることは楽しいが、
翻って、自分の人生でどんな作品(結果、成果物)を描きつつあるのか、反省しなければならない。