「金やチヤホヤされるためにマンガを描いているのではない。ぼくは読んでもらうためにマンガを描いている」
と宣言する場面があった。
「これ以上、王道の漫画はない」と題する最近のインタビューで、荒木先生は愛用の机を指して、
「僕にはこの机さえあればいい。そうすれば漫画が描けるから……」
と述べている。
ジョジョ1部が映画化されたときのムックでも、「僕はマンガ描いていければ、アシスタント雇っていければそれでいいんです!」と意気軒昂に述べていた。
どういう意味合いで述べているのだろう?
「答え」の取りかたは人それぞれで、受け取る人の年齢や職業、人生のどんな状況に自分が居るかで、導かれる答は異なる気がする。
よく似た問いかけで、「6億円の宝くじが当たったら何をする?」みたいな問いがある。
税引後の手取りで6億円が手に入ったとして、あるいは世間に認められるほどの富と名声、人生や生活の安定が保証されたとして、そのとき、人は何をするのか?
荒木先生の場合は、つまるところ、愛用の机で、自作のマンガ台を使って、新作のマンガを描き続けることが、いちばん楽しい、人生で残った「やりたいこと」になるのだろう。
似たケースで、グレン・グールドやXTCのアンディ・パートリッジ、コンサートで人前に出るのを嫌って、世間的には隠遁生活のような態に入っていって、音楽への愛着は冷めず、好きな音楽をやることに傾倒し取り組んだ人たちがいる。
自分の場合はどうなんだろうか?ということで、人生を振り返る問いかけとしたい。
年棒6億円が手に入ったからといって、宅急便に変装してヤクザ紛いの情婦と密会するだけが、お金の使い道ではない。
沢木耕太郎のエッセイ「バーボンストリート」で語られていたが、「ギャンブルはやらない。自分の人生そのものが、いちばんの大事な、大きな勝負事だからだ」という按配である。