ジョジョ読者のブログ

ジョジョの奇妙な冒険の感想、批評、考察を書いています。

ジョジョリオンの路線変更、あれこれの要素への感想

イタリア・ルッカで行われたマンガアニメのフェスティバルに、荒木先生が登壇。
ジョジョはジャズコンサートの要領で描かれていて、シリーズ全体の終わらせかた 頭の中にイメージはあるが、そこにどうやってたどり着くかが、描いている自分にもまだ分からない」という旨のことを答えたそうである。

質疑応答の詳しい様子は、イタリアの現地まで取材に行っているらしい、あらき100%さんのレポートを待つのが良さそう。ナポリの下町を一人旅しているらしいが、ぶじに帰ってきてほしい。

 

7部の執筆を始めた当初、青丸ジャンプのインタビューで作者は、ジョジョは9部まで構想がある。ただし、前作とはテーマもストーリーも全然違う、旧作をなぞるだけのリメイクはしないつもりですよ という旨を述べていた。
何度かこのブログで述べたことがあるのだが、私自身の予想、
ジョジョシリーズ全体の結末は9部、老人が主人公。老人が死んで、次の世代に思いや願いを託す話になるのでは と思う。

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そして、イタリア・ルッカのマンガアニメフェスティバルを巡る記事、5chのコメントなどを読んでいると、率直な意見が複数出ていて面白い。
ジョジョシリーズの結末予想(だいたいの場合、承太郎が復活するとか、1部冒頭に戻る、夢オチ、作者がマンガ原稿を描いてるオチ というアイデアが多い)、ジョジョシリーズを読みはじめたときの思い出話、シリーズのどこで読むのを止めたか、現行作はなぜつまらないのか などなど。

インターネットのやりとりを読んでいて、自分なりに感想が湧くが、長文・雑多な内容になってしまうため、こちらのブログにまとめたものを書いていく。


ジョジョリオンの欠点として、キャラクターに出落ち感があり、使い捨てになっていること。

ストーリーの進みが遅くヤキモキすること、作画の迫力、切れの良さが若いころに較べて落ちていることなどが挙げられていた。

私自身 頷き思うのは、ジョジョリオンは、ストーリーが途中で路線変更、これまでの設定を畳んで作り直す、当初 AだったものがA´に変化しており、
そのために読みにくく分かりづらい、読者をヤキモキ・肩すかしさせる構成になっているんじゃないか ということだ。

ジョジョリオンはつるぎが出てきて、次に夜露が登場したくらいで「岩人間とロカカカ」の設定を追加、路線変更したんじゃないか と思う。
当初 犬神家の一族のイメージで、東方家という家族をめぐる話、家系の呪いと謎を追う話で描きはじめたものの、これだと家族同士の争いで激しいバトルが描けない。
命の取り合いが描けず、壁の目をキーとした土地の謎を探る話では、どうも先の展開を描きにくい と、作者自身思ったのではないだろうか。

7部 スティールボールランが、ウルトラジャンプに移籍した時点で、遺体と大統領の設定を追加したように、
8部も設定変更をして、壁の目(東方家の土地、等価交換の作用)に替わり、持ち運びしやすいロカカカの実というマクガフィン後腐れなく倒しやすい岩人間という敵を設定しだのだと思われる。

岩人間という存在のアイデアについて、無機物から有機物(生命)がいかにして誕生したのか、生命科学のさまざまな学説、研究の取り組みからアイデアを得ているのだろう と、5chで指摘されていた。自分は理科系に疎いので、へーと思い納得した。


ジョジョリオンは、当初 作者が10代だった1970年代の仙台を舞台に構想されていたが、1話のネームを準備中 東日本大震災が起き、急きょ時代設定を変更し、2011年の仙台(杜王町)を舞台に描かれはじめた、という経緯がある。

 

身勝手な立場(読者)で後付けを言えば、7部の完結後 休載期間を置いて、じっくり構想を練ってから描きはじめれば良かったのでは、作中の矛盾や突っ込みどころは減ったのではないか と思う。

しかし、荒木先生自身は7部完結から間を置かず、1か月の休みも置かず8部を描きはじめたかったのであり、アメリカ大陸の旅から帰ってすぐに故郷 仙台の話を描きはじめかった。

それがどう転ぶかは、舞台とキャラクター、物語のテーマ(どう始まって、どう終わらせるか) イメージを描いた上で、ひとつひとつのエピソードを組み立てながら、描きながら考えていこう ということだったのだと思う。


東方家の呪いの病い、土地の力(壁の目、岩人間という存在、キリストの奇跡を受け継いだらしいロカカカの実) さまざまな構想・アイデアが、コミック12~14巻くらい、ダモカンが登場して主人公の過去を整理し、その後の新ロカカカ争奪に移った以降で、ようやく物語の流れ、テーマやストーリー、キャラクターの行く末が固まった感がある。

 

5chでも指摘されていたが、ジョジョリオンを読んで思うのは、どうも流れるようなストーリー展開が無くなりつつあって、キャラクターがひとりでに動き、作者の思惑を飛び出したような感じが少ない。作者の姿が見えてしまう場面が多いというか、キャラクターがひとりでに動き出さず、棒立ちのままというか、作者の操り人形になってしまっている感じがある。

主人公の定助が記憶喪失であり、彼の背景が読者にも分からず、感情移入しにくい滑り出しとなっていたこと。謎に謎を重ねるストーリー展開で始まったため、キャラクターの意図が掴みづらいこと。

これまでのジョジョでは、2部、3部、5部、7部などが顕著だが、ストーリーの組み立て、方向性はシンプルで、キャラクターの積み重ね、キャラクターがいかに生き生きと動き出して、物語を引っ張っていくか でストーリーを魅せていく組み立てが多かった。

8部はほとんど逆のパターンで、パズルのように物語を組み立て、主人公の謎、東方家や杜王町の謎を解き明かすスタイルで、物語を描きはじめていった。

まだジョジョリオンは完結していないので全体評価は出来ないが、このスタイルは荒木先生には合っておらず、あるいは月刊連載=ジャズコンサートの形式には合っておらず、ゆえに、連載途中での路線変更、設定変更を行い、今に至っているのではないか と思う。


もう1つ、5chで指摘されていた事実として、4部と8部 同じ杜王町を舞台に描いているものの、8部の杜王町は殺伐としていて、4部のようなホンワカした感じが無い。テイストが違っていてガッカリする という意見。読者の率直な感想として頷ける、貴重なものだと思う。

 

8部杜王町と4部の違いは、街や住民が理想化して描かれておらず、むしろ、現代の日本のいやな面、生活に潜むさまざまな悪徳を描いている面だと思う。
8部を読んでいて息詰まるのは、物語の中に、なかなか休まる場面が少ない、出にくい。
主人公どうしの恋愛、家族におけるこっそりとした秘密の会話。過去編における主人公たちの友情に、「善なるもの」は描かれているものの。
2人~3人くらいまでの限られた人間関係 東方家さえ、大家族であるが、ひとりひとりはバラバラであり、密室感、人間関係が狭く閉ざされた感じが強い。

コミック14巻 ダモカンとの決着、ミラグロマン、花都さんが東方家に帰還するシーンが印象的である。

このあたりは、世相を読んでの判断。作者の意図したところなのかとも思う。
少子化、プライバシーや個人の権利の重視。ケータイを中心としたまばらなコミュニケーションの横行など。

つるぎちゃんが血まみれのノリスケさんをどこかへ運ぼうとしているシーン、とんでもない事態が起こりつつある一方で、常秀たちはケータイ電話をいじってひとり遊びしている、仲が悪い訳では無いが現代的な、人間関係は希薄な、それぞれの殻にこもった暮らしをしている。かつ、だからダメだと全面否定している訳でもない…という感じ。

 

ーー5chの書きこみに刺激を受けて、私が思うところ、ジョジョリオンの感想、今後の行く末 ありそうなところを書き起こしてきました。

現代日本の家族のありかた、幸せのありかたみたいな普遍的なテーマから始まって、ロカカカの実(≒キリストの遺体が生んだ奇跡)、呪いの病をいかにして克服するか、東方家と吉良家 ジョジョの主人公たちで呪いを振り切り、幸せを手にするのは誰か。

ジョジョリオンは、主に3部~4部で提示されたテーマをリメイクしつつ、5~7部の展開、(当然のことながら)作者のデビュー以来の筆致を踏まえた、これまでの展開の集大成がおのずと含まれていくだろう と思います。

お話がうまくまとまるのかどうか? は、もちろん私には分かりませんが。ストーリーやキャラクター、テーマの方向性は固まっていると思うので、1~2年の連載を経て、(そんなにこの先の展開は長くならない気がします)定助たちと常敏の対決をクライマックスに、つるぎとホリー 両者がどのように救われるのか、密葉さんのお腹にやどった赤ちゃんにも希望を託しつつ、未来に希望が紡がれる感じで終わるのではないか と思う。

岩人間の院長 (表面上)89才の老人が最後の敵になっていたり、東方家の熟年夫婦

 離婚した50代のカップルがラストへのキーを(たぶん)握っていたりと、登場人物の年齢層が、1~2部の頃からずいぶんと上がっている。

 

おせっかいな話だが、荒木先生は来年 還暦、60才を迎えるらしく、プライバシーは知らないが、それなりの老いを自覚する年令なのだと思う。

同い年のゆでたまご先生を含めて、よく長い間 マンガを描き続けてくださった、よく頑張ってきてくださったものだ… と、一読者として、ありがたい気持ちがする。

キン肉マンの次期シリーズ(オメガマンアリステラとの戦い、いい加減にアタルが勝つと予想しており、その後の展開)、ジョジョ 8部~9部以降の展開 読者は好き勝手なことを述べるものだが、一方で、作者も好き勝手なものを描いて、ぞんぶんに描きこんで欲しいものだと願っている。