以前 9部は死後の世界、老人の話を描くのではないか…と予想を述べていたが、予想は当たらず、ハワイに住む少年が富豪になっていく物語となっていた。
前作と違う舞台設定、主要人物の配置、物語の構造となっていて嬉しい。
前作8部が着地点の見えづらい物語になっていたので、その反動か、ストレートかつ明快な物語になっていて良い。次回以降の続きが楽しみである。
主人公のジョディオは15歳。作者の荒木先生は60才をすこし過ぎたくらい。読者(ブログを書いている自分)は46歳である。
私の子どもが15歳で、今春から高校一年生になる。ジョジョの最新部の主人公がわが子と同じ年齢になったか、自分も年をとったな…と思うが、一方で、いま、15歳の少年の物語を描く荒木先生の英気、チャレンジ精神に感服する。
9部の舞台は閉じた亜熱帯の島々で、たぶん、8部の杜王町や7部のアメリカ本土やネアポリス王国は、本筋に絡んでこないのでは と思う。
主人公の名前だけはなぜか投げやりな使い回し(定助、吉良、ジョディオ)だが、基本、新しい物語を、いまの時代の問題意識を、作者がいま描きたい物語を描いているのが、ジョジョのサーガなのだろう。
登場人物のジョディオがナレーターを務める語り口が新鮮だが、物語には2つの視点、登場人物であるジョディオの視点、そして作者である荒木先生の視点が盛り込まれている。
ふたりの中間年令(やや老年寄り)である自分も、ふたつの立場、視点を意識しながら、たのしく読み進めていきたい。
追記 2023/3/21
第1話を読み返していると、くりかえし出てくるフレーズがある。
姿・形はあるが目には見えない力
名付けて「スタンド」
それはいつでもどこの場所でも存在しているが、見ようとしない人が見ないだけである
仕組み(メカニズム)の頂点だ
今はまだ目には見えない
だがオレたちの目の前にその「メカニズム」が「姿・形」として現れて来るんだ…
これは亜熱帯の島々でひとりの少年が大富豪になっていく物語
これらのフレーズは、ジョジョランズの展開、物語の骨子を示したものである。
姿形はあるが目には見えない。矛盾であり二律背反のようだが、そんな概念がスタンドである。
スタンドだけでなく、夢や希望、幸せや人生といった概念も、そんなものかもしれない。
ジョースターとディオを掛け合わせたような主人公が、スタンド使いであり、目には見えない幸せやこの世の理、ひいては大富豪となっていく物語なのだろう。
アメリカンな哲学・世界観は自分好みであり、今後の展開が楽しみだ。