ジョジョ読者のブログ

ジョジョの奇妙な冒険の感想、批評、考察を書いています。

デビルマン 全5巻を読む

 

今年のゴールデンウィークは身体をゆっくり休めようということで、5月3日からの5連休 何もせず、食べて、寝て、また食べて寝て…とゆっくり、なにもせず過ごしていた。
起きている時間はプロ野球を観たり、YouTubeを観たり、まったく生産的なことをせず、他には、マスクを外してスーパーに買い物に行ってみることくらいしかしなかった。

YouTubeで昔のマンガ、特撮、アニメなどの懐古チャンネルを見ているうちに、男塾からの流れで、永井豪 けっこう仮面デビルマンが出てきて、あれこれの動画を見た。
デビルマンの結末、ラストにいたる一連の展開を知った上で、デビルマンの漫画本が読みたくなり、岡田斗司夫の勧めにしたがって、完全復刻版 デビルマンを購入、1970年代 若かりし作者たちが描いた、原典の5冊を読んだ。

デビルマンを読んで、やっぱり凄かった。結末とラストへの展開、作品に込められたテーマなどを、前情報(爆笑問題永井豪の対談番組 これもYouTubeで観ていた)で得ていたので、サプライズの驚きは無かった。
サプライズは無かったが、やはりスゴイマンガで、マイナスの方向に突き抜けていく展開がすごく、コマ割りのうまさ、ストーリーのすごさ、予想を裏切り期待を裏切らない血みどろの展開に、ぐいぐい引き込まれ最後まで読んだ。

夜の海岸 主人公2人に巨大な光の軍団が迫る、最後の2ページがある。
ネタバレを知らず、中学生くらいの自分が週刊少年マガジンを読んでいて、思春期の心でこの話を読んでいたら、いったいどんな感想を持っただろうか…。 まっさらな心で読んで、向かい合ってみたかった、そんな稀有なマンガだった。


そして、デビルマンを読んで今更ながらに思ったのが、これは現在にいたるさまざまなマンガ、アニメの源泉、インスピレーションになっているに相違ない という事実だった。
エヴァンゲリオンチェンソーマン、寄生獣、東京喰種。これら諸作品をまともに読んだことは無く、傍目で観たことがあるだけなのだが、「ああ、なるほど…」と腑に落ちた。

ジョジョの荒木先生は、デビルマンを読んだとき小学校高学年くらいだったはずで、間違いなく、リアルタイムで読んでいた筈である。
jojo a gogo! 作者が読んだ小説や漫画のコーナーにデビルマンが載っていた気がするが、はっきりとは思い出せない。コミックス見返し 何かのランキングやコメントに、永井豪作品が触れられていたような気もするが覚束ない。
否、作者コメントやインタビューに頼らずとも、肝心の漫画作品 バオー来訪者の敵役 魔人ウォーケンが、永井豪作品の、あのモンスターのカオの描きかたをしている。
悪魔的なロックにのめりこみ、キングクリムゾンやピンクフロイドを聴きこむ10代を過ごしたという荒木先生は、自らの芸術体験のルーツのひとつとして、間違いなくデビルマンを通過、経験している。今更ながら、そのことが分かった。

(ついでにいえば、自分が読み込んだ漫画 ドラゴンヘッドで、伊豆の群衆が暴徒と化すシーンがあり、さながらデビルマンのクライマックスとそっくりである。望月ミネタロウ先生は最近 コミックエッセイを連載しており、東京怪童への未練を述べている。
 東京怪童 脳みそむき出しのモンスターは、あまりかわいらしい、子どもたちに受け入れられるデザインには見えないのだが、望月先生は、永井豪楳図かずお、東西ホラー映画を観すぎて、脳に影響を残してしまったのだろう…と思われる)


ジョジョという作品を観て、ヘンというか、変わっているところは、かつて斎藤環先生が述べた「過剰な健康性」、悪に対する善、善に対する悪がはっきりと描かれ、2つの対称・対立がくっきり、しっかり描かれているところである。
過剰な健康さ、過剰な健全さの変てこりんなところは、作者である荒木先生の作家性、善悪どちらに振れているのかよく分からないところもある、作家の個性につながっている。

ディオ・ブランドーの悪に対置するかたちでジョナサンが構想され、ジョナサンは概念的、抽象概念のような人物で、いま読むとあまり人物に血肉が通ってないというか、親近感を抱きにくい節もある。教科書に描かれる偉人像のような人物だ。
しかし、1部の物語を読んでいくと、泥水で口をそそぐエリナ、おせっかいやきのスピードワゴン、「あしたっていまさ!」と叫ぶポコとその姉。ジョナサンを囲む登場人物に、正義の心を体現し、物語を演じるキャラクターが複数登場する。
ポコであったり、川尻早人エニグマと戦った噴上の活躍。遺体を求めたルーシースティールの奮闘など、ジョジョには、あまり強そうでない、主人公でない人間たちの活躍する系譜がある。6部のラストを飾ったエンポリオもそうである。

ディオに始まる悪役たちの系譜と、ジョースター一族とそのまわりにいる人たちが織りなし、体現してきた正義の系譜。その二つがぶつかり、正義と悪、それぞれの戦いを描いてきたのが、ジョジョのサーガであり、物語なのだろう。
そしてその戦いは、9部 ハワイのジョディオの物語に続き、現在に至っている。


キン肉マン 週刊プレイボーイで連載中の物語は、ザ・マンとバッファローマンの戦いが終わり、次回 いよいよジェロニモネプチューンマンが塔の上で観た景色、「これは神も動くわけだ」の正体が述べられ、明かされようとしている。
デビルマンの神と悪魔の戦いと、キン肉マン 神と悪魔、人間(≒超人)の戦いは、かなり様相が異なっている。キン肉マンはきっと、デビルマンとは全く違った、神と悪魔、人間の戦いを描いていくのだろう。

ゴールデンウィーク デビルマンと並行し、気になったマンガ作品に「ちいかわ」がある。
仕事上の関係で、知人の方が読んでいて気になった作品で、1巻を買って、すこしずつ読んでいる。
「ちいかわ」と「デビルマン」の間に在るものが、現実の、地道な人生かな という気がしているゴールデンウィークである。